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【ネタバレなし】"優しさ"と"恐怖"の狭間で 『OMORI』 レビュー・感想

 

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ネタバレなしとは書いたものの…

この手のゲームはどこまでがネタバレではなく、どこからがネタバレなのかが人それぞれである。

 

もしあなたが、既にOMORIに興味を持っていて、これから遊ぶ予定があるならブラウザバックを推奨する。この手のゲームは一つも情報を仕入れずに遊ぶのが一番面白いから。

 

何もOMORIについて知らないという方は予告編だけでも見ておくといい。このゲームの雰囲気が分かりやすくまとめられている。

 

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ゲーム概要とあらすじ

『OMORI』は予告編だけ見ると雰囲気ホラーRPGに見えるが、ゲームとしてはかなりガッツリとしたRPGだ。一部でホラーが関わる演出が入るが、ゲームの大部分はMOTHERのような冒険をしていくRPGである。キャラとの会話も、買い物も、レベル上げといった要素も、RPGとして大事な要素は十分に積みこまれている。

 

ストーリー…奇妙に見え、恐ろしく見え、謎に包まれている2つの世界。白く何も存在しない部屋に住んでいた少年『OMORI』は、誘拐されてしまった親友『BASIL』を救うため、『KEL』『AUBREY』『HERO』の3人と一緒に奇妙な世界を冒険する。

 

 

『感情』と『戦闘』

戦闘としてはコマンドとターン制を合わせた分かりやすい戦闘だが、『感情』という要素がある。

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この『感情』は簡単に言うと3すくみのある状態異常であり、

・『喜び』は『怒り』に強い。ヒット率が下がるがクリティカル率が上がったりときまぐれな感情

・『怒り』は『悲しみ』に強い。防御力が下がるが攻撃力が上がる

・『悲しみ』は『喜び』に強い。防御力が上がるが『JUICE(MP)』が減少しやすくなる

・『恐怖』は…

といったものだ。自パーティー・敵の感情をコントロールしつつ戦うのが戦闘の基本。

 

本作の戦闘の良い所は、逆に『感情』ぐらいしかステータス異常が存在しない(あるにはあるが)のでとてもシンプルだ。そう難しくないので戦闘で死ぬほど頭を使う必要がなく、とっつきやすいシステムだと思う。

 

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勿論それだけで戦闘が成り立っているわけではない。通常攻撃の際、戦闘中に溜まっていくゲージを使用することで仲間との連携行動ができる。この連携行動は単純にダメージを与えるものもあれば、感情をコントロールしたり、回復を行うことができる。

 

『誰』が『誰に対して』行うかで行動の種類が変わるため、『誰の行動ターンを消費してまで連携する必要があるのか?』を吟味しながら戦う必要がある。『感情』に関してはシンプルな3すくみだが、連携行動はなかなか凝ったものになっているため戦略性が問われる。

 

"優しさ"で溢れた世界

冒険の舞台はMOTHERのようにコミカルで、不思議で少し変わった世界だ。時にはくじけそうになるかもしれないが、OMORIの冒険には3人の親友がついている。

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『KEL』はお調子者だが友達のことはしっかり見ており、『AUBREY』はちょっと短気だが友達のことを大切にする。年長でありKELの兄である『HERO』はみんなのお兄さんとしてしっかりまとめ、安心させてくれる。

 

一見奇妙さとホラーだけが目に入るゲームだが、4人の友情はこのゲームの大切な要素だ。彼らの支え合いやチームワークは見ていて微笑ましい。戦闘においても物語においても彼らの友情が織り成せる。

この3人以外にも写真を撮影するのが趣味の『BASIL』、どこでも(洞窟でも雨でも…)ピクニックを開いてみんなのお姉さんとして支えてくれる『MARI』と、優しいキャラクター達が多く登場する。モブキャラクターもボスキャラクターもみんな魅力的でかつ、ユニークなキャラクターが多いのでテキストを読むだけで楽しく、この世界の面白さをより引き立たせてくれる。

 

フィールドもマジカントのような変わった世界観もあれば砂漠やお城など様々。フィールドの各所では彼らがそのフィールドに適したアクションを行うポイントがあり、そこでも彼らの遊びが垣間見える。基本的には意味がないアニメーションが表示されるだけであるが、OMORIの世界に浸り込みたいならそれらも堪能するべきだろう。

 

圧倒的な作り込みと『恐怖』

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『OMORI』の製作期間は6年半と、かなり長いものだった。筆者自身もなかなか発売しないことにやきもきすることが多かった。しかし、いざ発売してみると「6年半は伊達ではない」とクオリティとボリュームが積みこまれている。

 

ボリュームに関してはこの手のインディーズゲーの中でもかなり多い方だろう。シンプルにクリアするまでにかかるプレイ時間(かかった時間は25時間)が多く、サブクエストも豊富だ。隠しエネミーやボスがいたり、そもそも収録されているテキストの量もすさまじいものになっているだろう。

収録されているBGMの量もとても凄いことになっている。ほぼすべてのボスに専用戦闘BGMがついており、フィールドによって戦闘BGMが変わる。イベントを盛り上げるBGMも多く、BGMの質も非常に高いものになっている。

おどろおどろしいものもあれば、コミカルなものもあり、アップテンポで熱いものもあれば、落ち着いた雰囲気を持つものも…とレパートリーが非常に多い。ネタバレになってしまうかもしれないが、あのToby Foxも1曲提供している。

 

クリア前にサウンドトラックの見るのは(曲名がネタバレになるのもあるので)オススメしないが、収録されている曲数は一般的なインディーズゲーの中でもかなり多い方だろう。

 

↑最序盤の戦闘BGM。これで気に入ったらOMORIを購入して損がない。

 

 

非常に多いボリュームのRPGは楽しめる部分が多い反面、クリアするまでに中弛みして積んでしまう危険性も併せ持つ。しかし、OMORIには圧倒的なクオリティがあるのでその危険については問題がない。

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知ろうとすれば答えてくれるOMORIの世界は膨大で、濃密なものだ。サブクエスト一つ一つもキャラクターのセリフがユニークで凝っており、MOTHERシリーズのような「キャラに話しかける楽しさ」が充実している。先頭にするキャラクターによってセリフやアイテムを調べたときのテキストが変化することもあり、「これしたらどうなるんだろう?」に答えてくれる。ホラー要素も隠されてるのがいっぱいあって最高や( ;∀;)

 

RPGにおいてこの手の要素は非常に重要であり、語られるストーリー以外に我々が『知ろうとして得たストーリー(情報)』はゲームへの没入感を高めてくれるものだ。その点に関していえば、OMORIはパーフェクトなゲームだろう。筆者は『色々なサブクエストを進めつつゲームのクリアに向かう』プレイスタイルということもあり、数多くの要素をこなしてきた充実感があった…が、いざ隠し要素を調べてみるとまだまだOMORIの世界には隠されているものが大量にあることに気づかされた。いづれ2週目をやらねば…

 

 

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OMORIは非常に魅力的であり、尖った作品にも見えるかもしれない。しかし、こちらからはこのゲームが『名作』であり『大作』であることは間違いないということは断言できる。非常に優れたストーリーラインと世界観の表現は見事である。語りすぎず、しかし先が気になるストーリー。こちらが探索すればするほど明らかになる秘密。ゲームとしての面白さも、物語としての面白さも十分だろう。

 

Steamのタグには『精神的恐怖』があり、ホラーが苦手な方はこの文字列を見るだけで興味が薄れてしまうかもしれない。実際このゲームのホラーは、来るものがある。優しさは恐怖を増長させ、かつどれもこれも演出が凝っている。安堵と恐怖の揺れ幅はホラーが苦手なプレイヤーを挫けさせるのに十分なものになっているかもしれない。

 

しかし、ホラーが苦手な筆者でもクリアまで楽しめて遊ぶことができた。それはこのゲームへの圧倒的な完成度がプレイヤーを引き付ける魔性の力によるものかもしれない。どんなに恐ろしくても、やめたい気持ちがあっても、この先の世界を、物語を見たいという執着心。ホラーが苦手だったとしても、手に取ってほしい気持ちはある。

 

現在PLAYISMがローカライズの作業を行っているとの告知もあり、そのうちローカライズされ、いづれは名作として皆に知られていくのだろう。PLAYISMはナイト・イン・ザ・ウッズ(これも面白いゲームだったので遊んでみてほしい)も見事なローカライズを行った実績があり、安定感がある会社だ。そのような会社にローカライズが行われ、数多くのプレイヤーに知られるのはとても喜ばしいことだ。

 

しかし、前述したようにこのゲームの要素は非常に多く、ローカライズにどれほどの時間がかかっても仕方ない。この記事を見て興味を持った、あるいは前から興味を持っていた方は現在英語のみであるがぜひ購入してみて遊んでほしい。英語もそこまで難しいのが存在しない(メインパーティーは子供たちなので難しい英語なんてものは使わない)し、翻訳ツール(筆者は難しい英語のときだけPCOTと呼ばれるツールを使用した。非常に便利であり、製作者に感謝)を使いながら遊んでもいいだろう。

6年半が産み出した『傑作』を、『世界』を、多くのプレイヤーに遊んでほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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