新しい一歩を踏み出しつつ、過去作を置き去りにしない。 『ペーパーマリオ オリガミキング』 感想
前置き
ペーパーマリオシリーズがかなり危ない立場にいたのは有名である。
3DSで発売された『スーパーシール』はファンからかなりの賛否両論(というより否が多め)だったらしく、次に出た『カラースプラッシュ』も同様の戦闘システムだったため敬遠され、売上は厳しいものになった。
今回のオリガミキングはペーパーマリオの命運を…
…みたいな視点で筆者は購入しておらず、適当に「雰囲気いいな~」というフワフワした感情で購入した。そもそもペーパーマリオシリーズをWiiで発売された『スーパーペーパーマリオ』までしか遊んでおらず、スーパーシールは単になんかあんま面白くなさそうだな~っていう直感で購入を避けた。というわけで、「シリーズを見守ってきたファンならではの視点で~」みたいなたいそうなことではなく、「シリーズが一番売れていたころしか遊んでなかったプレーヤー」からの目線でこの記事を書く。
そもそもこんな記事を投稿してることからお察しの通り、今作、『オリガミキング』はとても素晴らしいゲームだった。パズルと絡めた戦闘システムは発売前は不安だったものの蓋を開けると面白いものであり、特にボス戦の完成度はとても高い。当記事では『オリガミキング』が如何に素晴らしいゲームだったころを語ろう。
本題
オリガミな世界
今作の敵は折り紙である。「マリオもペーパーなんだから折り紙と同じようなもんでは?」と思っていたが、折り紙はペーパーマリオの世界で明らかに異質な存在であった。
マリオなど、味方陣営サイドのペラペラ達は白枠がついているのに対し、オリガミ達は
- 白枠がない
- 顔が無機質
- ペラペラ族と違い3Dモデル
と、ペーパーマリオシリーズのなかでも大きく理から離れた存在達であり、その違和感が敵として認識させてくれる。我々が慣れ親しんだ存在であった折り紙は、ペーパーマリオの世界では立派に敵というポジションに恥じない存在であった。
そんなオリガミだが、勿論我々の世界での「親しみやすい・温かみがある」という存在は本作でも表現されていて非常に美麗なものだ。スーパーシールからペーパーな世界を表現するために紙細工な世界の表現を追求してるのが伺えたが、今作でも更に磨かれているのがわかる。この表現のペーパーな世界を歩き回るだけでも非常に楽しい。
なお、本作では様々な場所にオリガミになったキノピオが隠れており、それらを見つけ出すことで戦闘中にキノピオ達が支援してくれるようになる。単純に戦闘でより有利になるために探す…というよりも隠れ方のレパートリーが豊富であり、見つけ出したときの一言コメントを聞く楽しさがある。
スーパーシール等の作品を知らないので何とも言えないが、ストーリーといいセリフ回しといいちょっとシュールでブラックなネタを言い放つのが過去作を彷彿とさせて嬉しい。本作のストーリー・キャラクター・テキストは十分魅力的なものであり、特に今作のアドバイザーであるオリビアはちょっと抜けててかわいらしい。
正直、初めて見たときはまぁ地味そうな…と思っていたのだが、いざやってみると「この子がストーリーを盛り上げていたのは間違いない」とまで断言できるぐらい強い存在感があった。過去作にはクリスチーヌやアンナといった個性の暴力ともいっていいキャラクター達がいたが、オリビアはそれに並べるほど魅力的なキャラクターだ。
ちなみに今作では久しぶりに仲間がついてくる。過去作とは少し違い、章ごとの仲間であるため戦闘にもそこまで関わらない程度の存在…ではあるが、ストーリーでは彼らが主軸になって盛り上げてくれる。仲間の一人一人が濃いキャラクターなのは過去作同様なので、過去作のマリオと仲間の掛け合いが好きだったプレーヤーは期待して損はない。
パズル要素
過去作もパズル要素が多めの作品であったが、今作は特にパズル要素が強めであり、戦闘にも絡んでくる。
一列や2×2の正方形に敵を並び替えて戦う戦闘システムだが、敵によってはトゲであったり、消えてしまったりと様々なジャマをしてくるのでやってみると結構難しい。ちなみにこのパズルは回転・移動させていい回数が決まっているため、闇雲に動かせば正解にたどり着くわけではない。しっかりと長考したいところだが、制限時間もあるのでテキパキ考えなければ最良のターンは回ってこない。
こう書くと「え…超バカだとできないのか?」ってなりそうだが、戦闘中にコインを支払うことで制限時間を延長したり自動で並び替えてくれるシステムがあるので安心してほしい。こんなシステムがあるのは有り難いが、結局コインを使ってしまうので出来るだけ自分で解けるようにならなきゃいけない。
この時間・コインを絡めたパズルは1回1回なかなかの緊張感があり、それが故に何にも頼らずに正解の並び替えができたときの爽快感が楽しい。上手くいくとコインボーナスも貰えるので所持金が自分のパズル力の向上を実感させてくれる。
この並び替え360°バトルだが、真骨頂はボス戦にある。ボス戦ではマリオが円の内側にいるのではなく、外側からスタートし中央にいるボスに近づいていく。プレーヤーは矢印パネルを並び替えることでマリオのルートをコントロールし、目標となるパネルに到達させることを目的にする。
このシステムのボス戦だが、ハッキリいって滅茶苦茶面白い。
ボスがコミカルな攻撃をしてくるのはもちろんだが、ボスごとに攻略パターンがかなり異なるので『必勝パターン』が存在しない。故にボスごとにかなり新鮮な気持ちで楽しめるのだ。ボスもそれぞれユニークな方法でマリオの進行を邪魔してくるので攻略法を探しつつパネルを動かすのが本当に面白い。筆者がプレイしたペーパーマリオシリーズのボス戦だが、オリガミキングがずば抜けて面白いのは間違いない。上手く攻撃できた時の爽快感が気持ちいいんだ…
また、過去作でもあったようにフィールドギミックでもパズル要素が豊富に存在する。これらのパズル、最初の方は簡単なのが多いが、だんだんと難易度が上がっていき最終的にはかなりの高難易度になるので侮らない方がいい。筆者もヒント機能を使わないとわからないものは結構あった。
ヒントといっても、「おてほんブロック」みたいなうざったらしいものではな
く、ちゃんと場面ごとに適したヒントの出し方をしてくれるので雰囲気をぶち壊すことはない。遠慮なく甘えていこう。
圧倒的センス
このゲーム、本当にセンスが良い。
そもそも新たな敵を『オリガミ』にするのが正直天才的だと思った。折り紙を敵陣営にしようとする発想どっから出てくる?
戦闘BGMは豊富(なんとボスごとに違う!)だし、並び替えしてるときとコマンド選んでるときにBGMが変化するのも素晴らしい。敵の攻撃モーションも単純に踏みつぶすとかだけじゃなくて色鉛筆を発射したりと、コミカルな動きが見てて楽しい。
フィールドBGMも豊富だし、安直にバッジシステムに戦闘を戻さなかったのも好感を持てる。過去の栄光に頼らずにペーパーマリオシリーズの持ち味であった「パズル要素」を戦闘に取り込み、かといって過去の成功を置き去りにはしない。過去作で評判が良かったストーリーは今作でも健在であり、新たなアドバイザー『オリビア』は過去作同様濃い存在。ブラックでコミカルな世界観は勿論、一つ一つの演出がシュールで面白く…
と本当にセンスいい所が多い。ほんとは演出について細かく語りたいぐらいだが、ストーリーのネタバレになってしまうので自分の目で確かめてほしい。Twitterなんかで演出楽しむのマジでもったいないからさぁ…ネタバレ踏む前にやってくれよな…
総論
オリガミキングは過去作のペーパーマリオシリーズから大きく戦闘システムを変えた。しかし、単なる奇を狙ったシステムではなく、ペーパーマリオシリーズの持ち味を活かした戦闘システムを追求した結果の変化だったのだ。
オリガミキングは新たなペーパーマリオとして新鮮であり、そして過去作のようなノリがあって懐かしくもなる素晴らしい作品だ。心地良いペーパーマリオの変化を、そして何より綿密に作りこまれたオリガミキングという世界を、作品を楽しんでほしい。そう思わせる芸術的で、センス抜群な作品だった。